僕はホモで、男で、人間だ。

22歳、人間の日々

僕しかいない部屋

独り暮らしを始めた。
自分の中でも理由なんてものは特になく、ただ独りを噛み締めてみたかった、それだけだった。

山手線から徒歩15分。毎月の6万円と引き換えに僕は7畳の部屋に住まう。
慣れない乗り換え、知らない夜道。
もう1週間は経つというのに、扉を開くと馴染みのない香りが押し寄せる。
僕はまだ部外者のようだ。

「独り暮らしを始めると親のありがたみがわかるよ」
そんな世間の言葉は、まんまと2日目に染みてきた。
掃除、洗濯、家事。
全てに自分の責任がつきまとった。
そんな当たり前のことを、僕はようやく識った。

でもそれは、「めんどくさい」と一緒に「自由」をもたらしてくれた。
全てが僕の思い通りになった。
シャンプーも、柔軟剤も、今晩のおかずも。

そして、自分がどれほど受動的に生きていたかを思い知らされた。
誂えられた環境の中でしか僕は生きてこなかった。
「選んでいる」と思っていた全ては「選んでもらった」何かだった。

 

これから、僕は全てを決めていく。
それは、とてもこわくて、とてもたのしい。
やっと僕は、僕を決めていける。

自由を手にして舞い上がってる22歳を浅ましく思うととまに、どこか誇らしくも思う。
それほどまでに、僕はこれまで、何かに縛られていたのだ。

嘘のない明日が訪れる。
僕が選んだ今日がある。
本当を謳う昨日がある。

1年後、僕はこの部屋で何を導き出すのだろう。