愛情のない愛撫
ゲイの世界だと比較的簡単に性交ができる。
今日も、なんてことはなく、セックスをした。
はじめましての言葉をスタートに、会って2時間でカラダを重ねているのだから本当に馬鹿げている。
他愛のない話にお酒を注ぎ、気づけばベッドに移っていた。
味のない唇も、体温のない指先も、全部簡単に手に入った。
無意味に解き放たれた精子は、虚しく肉体を泳ぐ。
愛情のないセックスに慣れてきた。
何も失わないし、何も得られないセックス。
快感すらも覚えられず、僕はただこの世界との境界線を確かめるように男のカラダをなぞり続ける。
僕の中に愛があるとしても、僕の外に世界が広がっていたとしても、それを繋ぎとめてくれるのはいつも性交だ。
そうして何も感じられないことが、何よりも悲しい。