僕はホモで、男で、人間だ。

22歳、人間の日々

今を生きるとかもうダサいでしょ

雨音が聞こえて、枕に顔を押し付けた。

今日は月曜日だよ?

アラームがやかましく起床を促してくる。

何度も自分と格闘しながら、やっとベッドから離れられたのは予定の30分後。

あーもう、疲れた。

 

シワシワのスーツで山手線に飛び乗る。

電車の発着音が耳障りだ。

走った疲労と一緒に汗もにじみ出てきて、不愉快極まりない月曜日。

 

満員電車で、やっぱり物思い。

 

きっとここにいるみんなは今日を誰かのために生きてる。

仕事も勉強も、未来の誰かのためにあるものだから。

そうやって自分の身をすり減らせることは素晴らしいことだ。やさしさだ。

 

今日を生きているあなたをわたしはちゃんと知ってる。

あなたが今を必死で生きてくれているから、わたしも今日を生きられてるんだ。

 

だから、がんばろう。

月曜だし、雨だし、逃げ出したいし、眠っていたい。

でもこんな日に、世界と関わろうと外に1歩足を踏み出してくれた君に、ありがとうって言いたい。

ありがとう。

 

今を生きるなんてもうダサいけど、わたしはあなたと、今を生きているよ。

男もすなるポエムというものをホモもしてみんとてするなり

冷房のかおりがする。
曇った空を眺めながら、今日

いいことを教えて
時と場合で先が思いやられる。

また今度
そう言えたらどんなに

街が沈み、夜が訪れる。
今を知った僕は最強だ

いい日、
いい気持ち。

サラダを食べにいこう。
シーザードレッシングでお気に召すまで
銀色に輝くフォークから君を眺めよう。
僕の気持ちが落ち着くまで

ほらね、またね。
そうつぶやきながら

コドル
インドージ

コドル
インドージ

言っていい?

「背高くていいね」は言っていいけど

「背低くていいね」は言ってはいけない

 

「細くていいね」は言ってはいけないけど
「太ってていいね」は言ってはいけない

「可愛いね」は言っていいけど

「ブサイクだね」は言ってはいけない

 

「脚ないんだね」は言ってはいけないけど

「脚長いんだね」は言っていい

 

「黒人」は言ってはいけなくて、「アフリカ系アメリカ人」と言わないといけないけど、

「白人」は言ってよくて、「白人」と言える

 

なんで?

なんで言っていいの?

なんで言ってはいけないの?

 

全部、思ってることなのに

 

人は違いをすぐ見つける

そしてすぐ+か-で判断する

言っていいこと

言ってはいけないこと

 

全員違うのに


違うことに良し悪しなんてないのに

 

背が高いことだけが良いこと?

太ってることは悪いこと?

可愛いことは良いこと?

脚がないことは悪いこと?

良い肌の色と悪い肌の色があるの?

 

誰がその良し悪しを決めた?

誰がどうやって

 

この世は全てふたつに分けられるのだろうか

良いこと、悪いこと

 

なんで悪いの?

なんで良いの?

 

思考は止められない

違いを見つけることは止められない

でも

言葉は止められる

違いを口に出すことは止められる

いや

言葉をみんなだそう

「あなたはわたしと違うね」

「わたしもあなたと違うよ」

そうだよ

どんなにあなたがあなたを普通だと思っていても、あなたは違う

他の誰とも違う

この世界に、あなたは、あなたしかいない

良くもない、

悪くもない、

あなたしかいない

 

それはとてもかなしいこと?

それはとてもさみしいこと?

 

違うよ

 

それはとてもうれしいこと

それはとてもたのしいこと

 

みんな違う、

だから

 

だから。

どうやって生きたい?

今日が終わる。

明日が来る。

人は何を求めて今日を生き、何を生むため明日を迎えるのだろう。

 

そんな哲学的自問自答を繰り返していたら22時。

時間の無駄遣いにもほどがある。

 

僕はやっぱり「生きること」が苦手だ。

周りを見ると、皆んな何かに向かって生きている。

何かのために生きている。

 

僕にはそんなものがない。

 

僕には何かを守りたい気持ちがない。

僕には何かを壊したい欲がない。

僕には何もない。

 

無気力と無関心ばかり成長して、僕は虚無の日々をおくる。

でも、

でも、

僕は、そんな虚無を発信したい。

 

僕が「今」を無駄にしていることをあなたに知ってほしい。

それが、僕の「過去」を有用にすることだと思うから。

 

明日が来る。

何も求めていない明日が来る。

何も得られない明日が来る。

それでも僕は明日を生きる。

いつか、こんな自分から抜け出せる日を目指して。

愛情のない愛撫

ゲイの世界だと比較的簡単に性交ができる。

今日も、なんてことはなく、セックスをした。

はじめましての言葉をスタートに、会って2時間でカラダを重ねているのだから本当に馬鹿げている。

 

他愛のない話にお酒を注ぎ、気づけばベッドに移っていた。

味のない唇も、体温のない指先も、全部簡単に手に入った。

無意味に解き放たれた精子は、虚しく肉体を泳ぐ。

 

愛情のないセックスに慣れてきた。

何も失わないし、何も得られないセックス。

快感すらも覚えられず、僕はただこの世界との境界線を確かめるように男のカラダをなぞり続ける。

 

僕の中に愛があるとしても、僕の外に世界が広がっていたとしても、それを繋ぎとめてくれるのはいつも性交だ。

そうして何も感じられないことが、何よりも悲しい。

永遠の月曜日

一週間が始まった。

大好きな音楽も耳障りに思えてしまうほど疲れきった月曜日の朝。

 

月曜日はこれまでも、これからも疎ましいものなのだろうか。

僕はまだ月曜日を待ち望めたことはない。

 

最近僕はとことん動き続けてる。

学校、就活、アルバイト。

この連続で日々を消費している。

休みなく体を動かしてるとやはり時間は早く感じるものだ。

 

二月に恋人と別れた。

本当に良い人で、でも彼は僕の外見や肩書き、ステータスばかりを見ていて、中身を覗こうとはしてくれなかった。

それがたまらなく悔しくて、たまらなく悲しくて、別れを告げてしまった。

 

でもどこかで後悔している。

恋を終わらせたのは僕だから。

僕が僕の想いを伝えなければ関係は続いてたのかもしれないから。

そんな無理して維持する関係に未来などなくても、それでもあと一日でも、僕は、彼に、僕のことを知って欲しかった。

 

そんな人はいま、新しい恋人を持ってるそうだ。

僕とまるで同じ肩書きを持った人と付き合ってるそうだ。

 

結局僕の価値ってそこにしかないのかな。

そんなものにしか見出してもらえないのかな。

 

なんて物思いに耽って気持ちが落ち込む月曜日。

でも、やっぱりよかった。

間違えてない。

そう思いたい。

僕の選択は、僕がしたことだから。

 

永遠のような一週間が始まる。

新しい、一週間が始まる。

肩が落ちる日曜日

ガムが潰れた階段、光沢のあせた手すり。

黒ずんだタイルをまたぎ、急行列車の風に煽られながらホームの椅子に腰を下ろした。

甲高いアナウンスも線路を削るような轟音も気に障る。

東京に生きて22年を迎えたというのに、身体も心も順応できていない。

 

鮮やかなスカートを着てる女性も、高い時計をつけたサラリーマンも、死んだ顔で生きている。

この車両の中で何割の人が今日を待ち望んでいたのだろう。

何割の人が明日を楽しみにしているのだろう。

 

何かを続けてどこかに着く。

目的地も目標もわかんないのに時間だけは過ぎていく。

今日食べた生命、カロリーを何に費やすべきなのかもわからず、今日も細胞分裂を繰り返す。

 

電車に揺られながら物思いにふけってたらもうこの世は灰色にしか見えなくなってきた。

生きてるのか生かされてるのか。

 

飯田橋」を告げる声に連られて電車を降りる。

いち抜けた。